最後の恋―番外編―
お互い身に着けているお揃いの赤いマフラーは、茜さんからのプレゼントだ。
学のマフラーの隅っこには白いウサギ、私のには黒猫が小さく刺繍されている。
私が学に買ってあげたお揃いのキーリングと同じデザインで、茜さんがわざわざ私たちのためだけに特注で作ってくれたものらしい。
こうやって季節が変わっても、変わらずに手をつないで同じ道を歩けていることに幸せを感じるのは私だけじゃないんだろう。見上げた学の顔にも笑みが浮かんでいるから。
きっと学も同じことを思ってくれている。
「今の美月の悩みの種が誠人って言うのも、何だか癪だなぁ。美月の頭の中に、お礼外の男のことを考えるスペースがあると思うと、すげぇヤだ」
笑っているくせにそんなことを言うからおかしくて、私はつないだ手にぎゅっと力を込める。
学はやっぱり大人で子供だ。
些細なことでやきもちをやいて。それを恥ずかしげもなくさらりと言ってしまえる素直さは、子どもの感覚に通じるものがあると思う。
本人にそう言っても認めてもらえなかったけれど。
でも、その感情は私にだってある。
学に他の女の人のこと考えてほしくない。
血の繋がったお姉ちゃんのことでさえ、あんまりいい気はしない。
学の頭の中全部、私でいっぱいになればいいのに、なんてことだって思っちゃうんだから。
それを伝えるためにも、私は学を見上げて言った。
「大丈夫、私の恋愛感情はまるごと全部学だけのものだし」
「当たり前だし」
「当たり前だね」
私の言葉に驚くでもなく、当然だとばかりにそういった学に、同じ言葉で微笑み返した。
こうやって微笑みあいながら、手をつなぎながら、互いに思いあいながら、いくつもの季節を越えて行けることをひっそりと願って。
宮田さんの待つログハウスへと、ゆっくり歩いていった。
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