最後の恋―番外編―
そうよね、呼び出しておいてお酒にのまれて酔いつぶれた女を、どうこうしたいと思うわけないものね。
ほっとしたような、がっかりしたような。
……ううん、やっぱりそんな私にさえ手をだそうと思わないほど、私が誠人君に恋愛対象と思われていない事実を突きつけられたショックが一番大きい。
視界がじわりと滲みだして、慌てて目をぎゅっとつむる。誰もいないから隠す必要なんてないのに、抱えた膝に目を押し当てた。
腰にとどまっていたタオルケットは、つま先までキチンと覆われていた。当然涙はそのタオルケットへと吸い込まれていく。
誠人君の匂いのするふかふかのそれが、まるで誠人君が慰めてくれているかのように思えて、余計に涙が溢れた。
声を殺して泣いて、やっと落ち着いた時、腕時計を見る余裕が出てくる。
そこに視線をやれば、針は11時11分を指していた。
こんなに悲しいときに時にぞろ目が出るなんて、泣いてる私をあざ笑っているみたいだ。
この時間なら終電に間に合うだろう。
誠人君にお世話になったお礼を告げて、早々にこの部屋から出て行った方がいい。
こんな酔っ払いを家に連れて来るはめになった誠人君の気持ちを思うと、本当に申し訳ないと思うから。
……こうやって情けないところばかり見られてるから、恋愛対象だと思われないまま月日がどんどん経っていくのよね。
そう自分を嘲笑して、くしゃくしゃになってしまったタオルケットを畳んで、ベッドメイキングを軽くし終えてからそうっと扉を開けた。