最後の恋―番外編―
自分の中の負の感情があふれでそうになる。
真っ黒でどろどろしたひどく嫌なものが。
それを堪えるためと言い訳しながら、誠人君の視線から遮るように、ぎゅっと手のひらを握りしめた。誠人君の気を惹いている物ごと。
「美月ちゃんって典型的な妹タイプだよな、妹に欲しいわー」
私の嫉妬心にも気づかずに、誠人君はもう手を動かして作業に戻っている。
「妹に欲しいの?」
「だって毎日からかって遊べるし、なによりちゃんと裁縫教えられるしな、兄妹なら」
その言葉に、思わず、……ううん、下心を必死に隠して。本気だと気づかれないような変わらないトーンで、のちに散々からかわれることになる一言を、口にした。
「じゃあ妹にしてみない?」