最後の恋―番外編―

……、何か言って。

どんな答えでもいいから、この恋にトドメを刺して。

まるで、死刑判決を待つ罪人のような気分だ。


「春陽……」


こわごわと、でもしっかりとした口調で名前を呼ばれた。
ピクリと身体が反応してしまったけれど、顔を上げることが出来ない。

どんな顔してる?
困った顔?
怒った顔?
それともなんにも感じないのかな?

怖い。

美月に偉そうなこと言っておいて、自分はなんだ。
返事をくれようとしている誠人君の顔も見れないなんて、どこまで勇気がないんだ私は。


「正直、俺よく分かんないんだわ」


誠人君が言った言葉は、ある意味予想できた言葉だった。


「俺、お前のことそういう目で見たことなかったし」


うん、知ってる。
私に向けられる下心や好意を含めた視線を、誠人君からは一度も感じなかったから。


「正直、混乱してるっていうのが本音」


今言葉を発したら、泣いてしまうと分かっていたから、私は唇を痛いくらいに噛みしめて俯いたまま小さく頷いた。

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