最後の恋―番外編―
分かってる。
私の気持ちは誠人君を困らせるだけだって、分かってた。
だから今まで隠し続けてきたんだもの。
友達のままでいいと、言い訳しながらずっと隠してきたんだもん。
「春陽……」
トドメを刺してほしいと願ったくせに、いざ答えを言われそうになると怖くて。
私は誠人君の言葉を遮るように「誠人君っ」名前を呼んで、返事を待たずに「帰るね」と力なく言った。
持っていた鞄は見当たらない。
でも誠人君のマンションは、自宅からそう遠くないから歩いて行けるはずだ。
さっきまで痛かったはずの頭は、この状況ですっかり忘れ去られていた。
「おい」、と呼び止める声を聞こえなかったふりして、リビングから玄関へと小走りに向かう。
ほら、ふらつかないし、大丈夫。
これくらい、大丈夫。
玄関のロックを開けたところで、後ろから大きな手が再びロックをかけた。
「おっまえ、酔ってるくせして帰ろうとするなよ」
私が扉を開けられないように、大きな手が後ろからドアをおさえている。そのまま、「ほら、帰るなら明日帰れ」と私の腕を掴んで、リビングへ連れて行こうとした。