最後の恋―番外編―
優しいね、誠人君。
そんな不器用な優しいところが好きだけど、今はその優しさがつらいよ。
私は誠人君に簡単に触れることができないくらい、好きなのに。
誠人君はなんでもないように私に触れる。
想いの差を突きつけられてるみたいで、悔しい。
「美月ちゃんから連絡があって、春陽の家誰もいないみたいだから。帰っても酔ってるお前を介抱する人いないぞ」
引っ張る腕をなんとか足に力を入れて連れて行かれまいとしているのに、力の差は歴然で、ずるずると確実にリビングへ連れ戻されてしまう。
「私、そんな子供じゃない。 自分のことくらい自分で出来る」
そう、出来るもの。
私はたいていのことなら自分で出来るんだから。
「子供じゃないって言うやつが、そんな簡単に泣くか?」
俯いて隠していたのに、誠人君は私を覗き込んでそう言うと、空いている方の手で涙袋をなぞるように涙を拭って少し笑った。
どうしてそういうことを簡単にするんだろう。
私をもっと好きにさせて、どうするんだろう。