最後の恋―番外編―
「くやしい……」
「なにがだよ」
思わずついて出た悪態も、笑って取り合ってくれない。
どうしてそんなに普通なの?
どうしてさっき私が言ったことをなかったみたいに振る舞えるの?
くやしくて。
くやしくて。
――……それでもすきで。
私は目の前にあった誠人君の頭を掴まれていない腕で引き寄せると、生まれて初めてのキスを誠人君に捧げた。
スキルもなにも持っていない私には、触れさせるだけが精いっぱいで。
それでも唇から伝わる、自分じゃない体温に、……誠人君の体温に胸が否応なしに高鳴った。
「すき」
呟いて、また触れて。
「すきだよ」
囁いて、触れて。
少しでもこの苦しいくらいの恋心が伝わって欲しくて、誠人君の温もりがもっともっと欲しくて、私はそれを繰り返した。