最後の恋―番外編―
私を引きはがそうとすれば出来る誠人君は、それをしない。
この状況で目を開けられるわけがなくて、つむっている私には誠人君がどんな顔をしているのかわからない。
それでも、私は繰り返した。
友だちじゃ、いやなの。
あなたの特別に、なりたい。
伝わって欲しい。
触れるだけのキスと、バカの一つ覚えみたいな告白の言葉の繰り返しを、どれだけしたのか分からない。
でも、何度目かの告白をしようと口を話した途端に、小さな舌打ちと「くっそ」という悪態。そして、腕をつかんでいた手が離されて、誠人君の腕が私の腰と頭をがっしりと掴んだと思った次の瞬間には、唇が塞がれていた。
触れるだけのキスが、本当に子どもだと思えるような大人のキス。
口の中を我が物顔で、誠人君の舌が動き回る。
上あごをなぞられて。
歯茎をなぞられて。
舌を絡め取られて、吸われて。
濁流のような快感が、私を連れ去っていく。
もう自分の足には力が入らなくて、誠人君の腕で支えられている状態だ。
どうして誠人君がキスをしてくれたのか、分からない。
それでも、嬉しかった。
こんな私にすこしでも欲情してくれたのかな。
すこしは友達の枠からはみ出ることができたのかな。
そう思いながら、私の意識はブラックアウトした。