最後の恋―番外編―
まだ少し残っている目じりの涙に口を寄せて、しょっぱい涙を舐めとる。
そのまま、さっきまでむさぼっていた艶やかな唇に触れて、乱れた黒髪を手で整えてやる。
腕の中にすっぽり納まる春陽は、寝ていても俺の心を揺さぶった。
本能に従って思い知るとか、どれだけなんだよ俺。
友達のフィルターでしか見てこなかった。……いや、友達という枠から外さないようにしていたという方が正しいかもしれない。
そうしていたのは、春陽の言葉を借りれば“フラれて一緒にいられなくなる”のが分かっていたからだろう。
付き合えたからといってずっと一緒にいられるという保証はない。
別れれば友達に戻ることは難しいし、そこで春陽との縁はなくなる。
それが分かっていたから、自分の中に微かにくすぶっていた気持ちに蓋をして、春陽を友達だと思い続けて今まで来た。
でも、春陽の告白をきっかけにその蓋がこじ開けられた。
好きだと言われて、驚いたけれど込み上げる嬉しさにそれ以上に驚いて、繰り返される告白とキスに理性が崩されて、本能に自分の気持ちを自覚させられるなんて。
「春陽、俺……」
寝ている春陽の額に自分のそれをくっつけて、囁くように春陽がくれた言葉とおなじ言葉を紡いだ。