愛と復讐



尚治side




「ふぅ……」

女子生徒の背中を見送りため息をつく。

「あいつ、生きてたのか」

煙草を取り出して火をつける

確かあの子は春風杏子
たいそう、俺を憎んでるんだろう

当たり前だ。
あんなことをした奴なんだからな

「………あれは、憎しみの固まりとなってるな」

ふとそう口にすると
どうしようもない虚しさに襲われる

「……わかってるさ。兄さん。俺は、もう振り返らないと決めたんだ」

恨まれたって構わない
俺はそう生きていくと決めたんだから。

「春風杏子、か」

小さな呟きは
煙草の煙と共に消えていった。





< 15 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop