愛と復讐
尚治side
「ふぅ……」
女子生徒の背中を見送りため息をつく。
「あいつ、生きてたのか」
煙草を取り出して火をつける
確かあの子は春風杏子
たいそう、俺を憎んでるんだろう
当たり前だ。
あんなことをした奴なんだからな
「………あれは、憎しみの固まりとなってるな」
ふとそう口にすると
どうしようもない虚しさに襲われる
「……わかってるさ。兄さん。俺は、もう振り返らないと決めたんだ」
恨まれたって構わない
俺はそう生きていくと決めたんだから。
「春風杏子、か」
小さな呟きは
煙草の煙と共に消えていった。