教師Aの授業記録
そこまで言い終えて突然に、山下絵里はおどけるようにパッと両手を広げて見せた。
「……なぁんて。
今の話は真面目に受け取らないでくださいね。
ちょっと33分探偵みたくエセ推理をやってみたかっただけですから」
しかし、茶化したところで和むような空気ではなくなっていた。
すっかり聞き手に回っていた田中の険しい表情はすでに危険域まで達していた。
今にも低く唸りだしそうなキレた目で山下を睨んでいる。
無論、そのように見るからに穏やかでない田中が山下絵里のその発言など聞き入れるわけがなかった。
「……てめぇ…。
…何がエセだ。
紙に書いてあった内容と一言一句違ってないのは一体どういうこった?」
すると彼女は口元だけで哂って飄々と答えた。
「初めに言った通りですよ。
――私は何もかも知っている、と。」
再度告げられたその言葉の意味を、田中は今度は正しく理解した。
決壊寸前の怒りを抑え込みながら、低く問いかける。
「…すなわち、それは何もかもお前が仕組んだことというわけか」
「まぁ、そうですけど」
怖いもの知らずな山下絵里はさらりと頷いて見せてから、
「…でも残念ながら、これは私だけが仕組んでやったことではありません。
実を言うと、あなたのお父様も進んで協力してくれたんです」