教師Aの授業記録
山下絵里は顔を覆っていた手を下ろした。
少し落ち着いたようにきょとんとした目で田中を見上げた。
「……チーズケーキです」
ぽつりと、そう答えた。
「本当にそれはチーズケーキだったのか?」
田中は怪しむように訊く。
「はい」
しかし彼女は当然のように頷いた。
「…本当にそれは普通のチーズケーキだったのか?」
「普通のチーズケーキです。
レアチーズケーキじゃなくべイクドチーズケーキの方です」
山下絵里はこだわりを持って答えた。
田中は眉間に皺を寄せた。
彼女の様子から察するに本当に普通のチーズケーキを作っただけのようである。
「……何か変なもんを入れたりしなかったか?」
疑う田中の問いかけに「いいえ」と答えると思いきや、彼女は「うーん」と首を傾げた。