教師Aの授業記録


「お前、これワザとなんじゃねぇの?」


瘤取り爺さん並みに頬を腫らした田中が言った。


「ほぅ。何を根拠に?」


「外から飛んできたボールがこの教室に入ってきて、しかも俺に命中するってどれだけの確率だよ?」


「お前のその足らん脳みそでは分からんだろうな」


「……てめぇ、いちいち俺を怒らせるのが上手いな」


ぼきべきっと両拳を鳴らす田中。


「私にはその確率は既に分かっている」


「あん?」


「ずばり100%だ」


「んなわけねぇだろ」


すると教師Aはふっと涼しげに笑い、


「実は勝手ながら野球部のピッチングマシーンを拝借させて貰った。
その球の出る速度、角度を測定。教室の高さを測定した後、その目標地点に到達できるようなマシーンの位置を諸々の方程式から算出。
後は野球部の一人を買収して非常ベルを合図に動かしてもらうよう頼んでおいた。
そして、今日、お前をその目標位置ぴったりに座らせることに成功した」


「当てる気満々じゃねぇか!」


「これほど上手くいくとは思っていなかったがな。さすが物理教師の本領発揮といったところか」


「勝手に自分に酔いしれんな!!」




――教師Aの専門分野が物理。



謎に包まれていた彼の事が一つ明らかになった…。



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