教師Aの授業記録
それではまた明日
本日は快晴。
高気圧が張り出してきて全国的に晴れるでしょう。
とニュースで言っていた天気予報通り。
空が朝日に白んで眩しい。
「……はぁ…」
眠い目を重たくとろんと下げたまま歩く男子高生がここに一人。
その日の朝も、田中健はいつも通りの時間にいつも通り徒歩で登校していた。
今から普通に歩けば、ぎりぎり遅刻しない程度の時間に学校に着く。
いつも彼は裏門から学校へ入っていくのだが、定刻になると、門に立つ生活指導の教師が遅刻しそうに走ってくる生徒を前にこれみよがしにその門を閉めてしまう。
そして、田中はいつも生活指導の教師の怒鳴り声を聞きながら、滑りこむように閉まりかけの門を通り抜けるのだ。
だが、それでも田中は一向に登校する時間を早めようとする努力はしなかった。
いつも同じ時間に家を出る。
焦るのは学校の手前でだけだ。
今だって、少しも急ごうとはせずに、マイペースな歩調で歩いていた。
まぁ、別に運悪く遅刻してもいいし。
最近は真面目に出席してるからそれなりに大丈夫だろ。
そんなことを思いながら、田中はぼーっと焦点も定まらず、ほとんど前も横も見ずに歩いていた。
体に染みついた習慣から、足が勝手に学校までの距離を辿る。
細い住宅街の道を通って行く。
とある住宅の塀の角を曲がる。
そこで、
「…うわっ」
出会いがしらに人にぶつかりそうになって、やっと、重たかった彼の目蓋がばっちりと開いた。