教師Aの授業記録
「……はぁ…」
田中は深々と息を吐いた。
なんか最初会った時と全然雰囲気が違う……っつーかもはや別人だろ。
そう思いながらも、やっぱりアレが本来の山下絵里なのだろう、と彼は思っていた。
何せあんなに生き生きしてるんだから。
…まぁそれは良かったのだけれど。
一難去って、また一難という感じだ。
教師Aは居なくなったが、兄妹にしてもアレは似すぎている。
どうにも教師Aが居なくなった気がしない。
しかも実のところ、あれから夢にまで何度か出て来ていた。
あの強烈キャラが頭ん中に焼き付いて離れていないということだろうか。
今にもこの学校のどこかからヒョッコリ出てきそうな気がしてならない。
「……うあ。重症だな、俺も」
田中は重くなったと感じる鞄を担ぎ直し、自分のクラスの教室の扉を開ける。
「…遅れてすんませーん」
だるそうに告げて、中に入ろうと…
しかし、そうやって見た先の教壇には教師Aの姿が――
「――遅刻は厳禁だ。さっさと席に着きたまえ」
田中は、見事にかちーんと扉の前で固まった。
しかし目蓋を何度か動かし、まばたきすれば、いつもの担任教師の顔へと戻った。