教師Aの授業記録
「おい、何そこで突っ立ってるんだ。田中」
そこでやっと田中は我に返った。
そしておかしくなったとしか思えない頭を押さえた。
「……すみません。ちょっと変なデジャブが入って…。
……頭が変みたいなんでちょっと保健室へ行ってきていいですか」
「いいわけないだろ。
もうじき防災訓練が始まるんだからさっさと座れ」
そう言われてしまい、田中は仕方なく自分の席に座るしかなかった。
しかし座ったちょうどその瞬間に、ジリリリリリリとけたたましく非常ベルの音が鳴った。
にわかにざわつく教室内。
そして――――
ガシャ――ン!!
「ぶべらっっっ!!」
窓を突き破って飛んできた野球ボールが田中の顔面に突き刺さって…
田中は勢い込んで床に倒れた。
かなりど派手に倒れたものなので、周りも驚いたようにどよめいた。
教師が慌てた様子で「大丈夫か」と駆け寄る。
しかし田中には近づいてくる教師がこう言っているように聞こえていた。
「……ははっ。
実は勝手ながら野球部のピッチングマシーンを拝借させて貰った。
その球の出る速度、角度を測定。教室の高さを測定した後、その目標地点に到達できるようなマシーンの位置を諸々の方程式から算出。
後は野球部の一人を買収して非常ベルを合図に動かしてもらうよう頼んでおいた。
そして、今日、お前をその目標位置ぴったりに座らせることに成功した」
田中が肝がひんやりと冷えるのを感じた。
「……やっぱり消えてなかったか、クソ教師」