復讐のkiss
数キロ先に見えるグリフ軍の灯り。

私は眠れなくて、その灯りを一人、

見つめていた。

「…眠れないのか、ミラ」

その声に驚き、振り返る。



「…ラメセス王」

…本当は怖い。

中央軍の指揮官になるなんて大役。

でも、自分から言い出した作戦だ。

そんな事が言えるわけもない・・・



…ギュッ。


「・・・」

ラメセスは私を力いっぱい抱きしめた。

そのぬくもりに安心して、

無意識に抱きしめ返していた。


「グリフに指一本触れさせはしない。

敵の誰にも、ミラを傷つけさせはしない。

オレとオシリスが必ずミラを守るから」



「・・・は、い」

それ以上は何も言わず、

黙ったまま抱きしめあっていた。

自分の鼓動と、ラメセスの鼓動が、

静かに重なり合う。

もし命を落としても、

もし命を落とすことがないとしても、

こうやってラメセスに触れるのは、

これが最初で最後だ。

この戦を最後に、私はイスタ帝国を離れるのだから。
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