影送り


ふふっと笑いながら、履いていた靴を抜いた。


そして、そっと足先も水に漬ける。



冷たい水が、現実世界からわたしを解き放った。


青が、夏らしく。


物悲しげに。


わたしを、ふわりと包む。



あの日手放した、彼の手が脳裏に蘇った。



ブンブンと首を振り、その情景を振り切る。



「もう――――全部、終わったことなの」



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