影送り
青いシャツを羽織った青年はそんなわたしを見て、ただ微笑んでいた。
「冗談、なんかじゃないよ」
そっとわたしに近づく。
水の中、どうやって後ずされと言うのか。
「自分の影を、じっと見つめて。
それから、彼を思い出すんだ」
川から上がり、不審に思いながらも影に目を凝らす。
『ねぇ千夏、それって影送りって言うんだよ』
「そう、そのまま」
『影を見つめて、その後目を閉じるんだ』
「その次に、目を閉じて」
『それから――――』