影送り
「俺は、ここがいい」
そういいながら、川に入っていく。
水かさはやっぱり低くて、彼もわたしのように水を蹴っていた。
バシャッと大きな音を立てて、水しぶきがあがる。
わたしはそんな彼を、見つめているだけだった。
「千夏も、分かってるんだろ?
俺が、本当はどこにいるはずなのか」
無言で、わたしは水しぶきを見つめ続ける。
太陽の光が反射して、キラキラと煌いた。
時が経つのも忘れて、君に恋したあの時間。
あの時間は、とうに終わったはずだった。