影送り
もう一度涼君の手を取る。
離したくない。
空と川の青に呑まれそうになりながら、わたしは込み上げて来る何かを必死に押し殺した。
わたしはまだ、涼君から卒業出来てなかった。
あの日以来。
あの夏の日以来。
わたしの時も、涼君の時も。
成長せずに、止まり続けていた。
「千夏・・・もう、いいよ」
その声と共に、わたしの手は涼君の手から外されていた。
あの日失った温もり。
それを、わたしは再び手放そうとしていた。