影送り
「振り返るのが怖くて、時を止めたかったのは、わたし自身だった」
「もういいよ」
わたしは、ただ弱かった。
小さくて、この世界と時間に潰されそうだった。
「影送りって、変な名前だよね。
どこに、影を送るんだって、ずっと意味考えてたの」
ただ、証が欲しかった。
君が死なないという、保証が。
あの日、君の余命宣告が告知されてから。
君を思い出して、影を空に浮かべるなんて、わたしには出来なかった。