散華の麗人
戦の始まり

王と傭兵

ここは戦乱の世

強きものが勝ち、弱者は死に絶えるか、屈辱と共に生きるしかない過酷な世界だ。

――細川国
戦続きではあるが、民が多く農業も盛んで兵の数も多い豊かな国だ。
現在も尚、勢力を伸ばしている。

(ここが今回の任務先か)
橙色の髪の女が、和風の城を見ながら思う。

彼女は傭兵だ。

傭兵は最も稼げる職業であり、様々な者に仕えているが、それと同時に死と常に隣合せでもある。
敵に殺される可能性だけでなく、有能でなければ見限られる。
そして、情報が漏れないように主君から殺されることもある。
主君の命は絶対であり、“自刃せよ”と言われれば、拒絶は許されない。
拒絶すれば傭兵としての誇りが貶められ、或いは罪人扱いをされることも多い。

まるで、動く人形のようだと言う者もいる。

しかし、彼女はこの仕事を誇りに思っている。
過酷だからこそ、上の者に己の才を買われることは強者であると黙認されることとなることを知っているからだ。

(とうとう、私が国王に必要とされた。)
彼女は静かに歓喜した。
(……まぁ、さぞかし頭がお堅い大人がいるのだろうな。)
喜んだ反面、彼女は冷静だった。
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