散華の麗人
そして、振り返る。

無数の敵。

滴る血が軍が通る道を濡らすが、不思議と誰も見上げない。
馬を駆けることで必死なのか、取るに足りない話なのか。

自分の手を見れば、赤い血で染まっている。

きっと、この身も染まっている。

温かい感触も感じない。
こころも感覚も捨てた。
捨てる術を知っている。
普段の生活ではしないが、戦になるとそうする。
感じていると自覚した上で、感覚を捨てる。

気が狂いそうな話だ。

だが、こうしなければ耐えることはできない。
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