散華の麗人
その老人が誰であるかは直ぐに分かり、風麗は跪いた。
(細川陸羽!)
かつて、政権を息子に譲るまで国王だった者だ。
誰からも慕われ、敬われている。
「ジジィ!!本城に引きこもっとかんでええのかいな?」
「それはこっちの台詞じゃ!バカモノ!!大体、国王であるお前が本城にいないとは聞いて呆れるわ。本当にお前という人間は……」
陸羽はそこまで言ったが、一正に呆れてやめた。
「まぁ、バカモノには耳がないから仕方ないのぅ。」
溜め息混じりに陸羽は言ったが、一正は知らん顔をしている。
(本城?ここは違うのか?)
風麗は不思議そうな表情をする。
「ぬしの名は?」
陸羽が問う。
「風麗や!!なかなかに頭良さそうやろ?」
「バカモノ、お前に問うてないわ。」
尋ねられた風麗ではなく、一正が答えると陸羽が呆れ返った。
「ということは、ぬしがここに来る予定であった傭兵か。」
「はい。」
「うむ。」
風麗に対して、陸羽は満足そうに頷く。
「バカモノとは大違いよな。本当に勿体ない。」
「やろ?」
陸羽が馬鹿にしたように言うにも関わらず、一正は笑う、
「面を上げよ。」
陸羽が言ったが、礼儀上、風麗は頭を上げない。
「同じことを言わせるでない。面を上げよ。」
陸羽が不機嫌そうに言う。
「申し訳ありません。」
(変わったお人だ。陛下ほどではないけど。)
風麗は静かに頭を上げた。
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