散華の麗人
驚きに刹那、口を閉ざす。
「居場所……」
狐子はその言葉を反芻した。
「あぁ……」
口から声が漏れる。
「最初から、貴方の元へ行けばよかった。そうすれば……分かり合えれば、復讐などしなかった。」
「わしが仇ということは変わらん。仕方ないことや。」
一正は困ったように狐子を見た。
“カラン……”
仮面が落ち、乾いた音が響く。
「こんな醜い心で誰に仕えましょう。こんな醜い姿をした化け狐を誰が」
「わしがおる。」
一正は狐子の言葉を遮った。
「貴方はこんな醜い化け狐を必要として下さるのですか?」
「あぁ。」
狐子に一正が返事した瞬間、狐子の頬に涙が伝った。
「狐は……狐は」
「つべこべ言うな!!」
「は、はいぃっ!!」
気迫を込めて一喝する一正に、狐子は思わず畏まった。
「……ぶっ。わっはっはっはっはっ!!今のがそんなに驚いたか。」
一正は大声で笑った。
「からかうのはおやめください……国王陛下。」
そう言った後に狐子は少し黙った。
「いえ。“主”と呼ばせていただきましょう。」
「好きに呼べ。」
狐子の言葉に一正は笑う。
「言葉はいらん。明日に備えよ。」
一正はそう言うと、狐子に背を向けた。
「部屋はここの隣。風麗という橙色の髪の毛の傭兵と同じ部屋や。」
狐子に向かって、追い払うような仕草をした後に言った。

そして、狐子は部屋を出た。
その時、目の前を何かが通り過ぎたような気がした。
「?」
襖を閉めて、その方向を見渡す。
しかし、何もいない。
(気のせい……?)
狐子は首を傾げながら、部屋に向かった
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