散華の麗人
勢い余った杖が床に当たり、大きな音を発てる。
「そんな屁理屈は通用せん。お前はいつもそうやって、楽観的に考えるから後がない。大体、お前は」
「後、新しく傭兵を雇った。」
「バカモノ!!人の話は最後まで……って、なんじゃと?」
陸羽はどさくさに紛れて言った一正を信じがたい表情で見た。
与吉郎も目を丸くしている。

「新しく傭兵を雇った。」

一正がもう1度言うと、時が止まったかのように静かになった。


「はぁああああっ!?」

少しして、陸羽と与吉郎が叫んだ。
2人は頭を抱える。
よろよろと、先に陸羽が座り込む。
心配そうに与吉郎が動きかけて、陸羽が無言で必要ないと断る。
「お前は真の、まっことの、バカモノじゃな!!」
一呼吸置いて怒鳴る。
「心配すんな。大丈夫や。」
「心配じゃ!!」
陸羽はすっかり狼狽している。
「そうか。愛されとるな。わし。」
言われた相手はのんきなことを言っている。
「お前のその楽観的な解釈に右に出る者が見当たらんな。」
「はっはっはっは!!そりゃあいい。」
「良くないわ。嫌味じゃよ。バカモノめ。」
陸羽が再び怒鳴る。
(陛下は馬鹿だ!!……陸羽殿が可哀想になってきた。)
与吉郎は唖然としている。
「ただでさえ、1人雇ったばかりじゃろう。」
「心配すんな。……今回の戦に勝てばいい。」
「バカモノ。万が一を考えよ。」
陸羽は呆れて、一正を見た。
「わしはいいことしか考えない。悪いことは他の奴が考えるやろ。」
「もういい。お前と話すと、富士の樹海へでも迷い込んだような気分になる。」
そう言いながら、一正を追い払う仕草をした。
「雇った者はどこだ?」
「あ?あぁ!」
一正は一瞬、間抜けな表情をした後に手を打った。
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