散華の麗人
一正は後ろをちらと見る。
「狐子。」
そう呼ぶと、一正の背後に狐子が現れた。
(さっきまで、気配がなかった。……奇術師か。)
与吉郎は狐子を怪訝そうに見た。
「お呼びですか?」
狐子は一正に跪く。
「………ぬしは……上尾の……」
陸羽は驚いて、狐子を見る。
「…………しばらく、席を外せ。」
一正を見ながら、陸羽が言う。
すると、一瞬だけ真面目な表情で笑んだ後、いたずらっぽく笑った。
「ややっ!?夜伽という名のセクハラを」
「せん。何を言っておるか。バカモノ!!」
“バスンッ”
陸羽は呆れて、一正を叩いた。
(夜ですらないし。)
与吉郎は一正に心の中で突っ込んだ。
「そういうわけで!!わしはリアンのところに行くことにする!!」
(どういうわけだ。)
一正がそう言いながら元気に外に出ると、与吉郎も下がった。
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