散華の麗人
少しすると、風麗の瞼がぴくりと動いた。
むずがるように眉間にしわを寄せて、もにゅもにゅと何か言う。
“下ろしてください”とでも言っているのだろうかと一正は下ろす気もなく苦笑する。
「………お……さん。」
途切れ途切れにそう聞こえた。
(お父さん!!?い、いや、お兄さんかもしれん……!あ、あるいは、お師匠さんかも。)
「おししょー……さん……」
今度はややはっきりと聞こえた。
「あ!あぁー、そう。わし、国王やで。」
あははと笑って言った。
(よかった。まだ、お父さんではないんやな。お師匠さんがいくつかにもよるけど。)
心底、ホッとしていた。
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