散華の麗人
しかし、女性が自分を抱きしめる感覚で現実だと思い知らされる。
「何故、ここにいる。」
「……」
何も答えずに、ただ、胸板に顔を埋める。
「月雲。」
ずっと呼びたかった名前。
やっと、会えた。
だが、どうしていいのかわからない。
「……どうして、逃がしたの?」
たどたどしい様子で言葉を紡ぐ。
「さびしかった。……だって、雅之さんがいなくて、ひとりぼっちで……私は、私は」
「貴様は傭兵だろう。感情など捨て置け。」
泣きそうな表情の遥葵に、つい、いつもの調子で遮った。
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