散華の麗人
だから、迂闊には殺せない。
国王から喜作が処される可能性があるからだ。
『喜作様。』
『風麗。』
喜作は静かに呼んだ。
『あんたは逃げろ。』
『傭兵は、主の為に戦うのが役目でございます。』
『違うさ。』
風麗に喜作は言う。
『あんたの役目はオレが決める。そうだろ?オレは逃げるという命を出した。』
『……』
『オレには、この海を見捨てるなんざできねぇ。海はオレの命と同じくれぇ大事なもんさ。』
喜作は海を見た。
『……だがよ。あんたは、オレとは違う。こんなところで死んじまうのはもったいねぇ。』
そう言うと、風麗の背を押した。
『行け。』
風麗は静かに従った。
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