散華の麗人
笑った顔を見ると、風麗も笑った。
「陛下には真面目な顔よりも、アホで間抜けな笑った顔がお似合いです。」
「その言葉、あんたにそのまま返すわ。」
それに一正は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ムスッとするより、笑った方が美人やで。」
「勿体無きお言葉です。」
(私、ムスッとしているか?)
風麗は一瞬、心外そうな表情をしたが、一礼した。
「可愛い奴や。わしの妻にしたいくらいやな。」
冗談っぽく言う。
「貴方には千代様がいるでしょう。」
「おぉ!わしの妻の名前をよう知っておるな。」
呆れ顔をする風麗に、自分の妻の名前を言われた一正は驚いた。
「当たり前です。そこまで無知ではありません。」
「わしの名前は知らんかったくせに。」
「名前は知っていました。ただ、陛下があまりにも奔放的でアホ面でしたから、分かりませんでした。」
「アホ面って……まぁ、いいけど。ほんまに正直な奴やな……」
一正は拗ねたように口を尖らせた。.
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