散華の麗人
それを見て呆れた表情をする。
「当たり前です。傭兵相手にいきなり名前を訊く契約者がいるものですか。」
そう言うと、一正は“ここにいるぞ!”という顔をした。
「……あー。」
それを察して更に呆れる。
「とにかく、おかしな冗談を言うものではありません。」
「あいつに聞かれたら張り倒されるからな……おぉ、怖い怖い。」
そう言いながら、一正は大袈裟な素振りを見せた。
「まー、冗談じゃないけどな!」
「陛下!」
「はっはっはっ」
「はぁ……」
風麗は溜め息を吐いた。

すると、背後から人が来る気配がした。
一正はそちらを見る。

「一正殿。」
少しして、陸羽より少し年下の初老くらいであろう男の姿が見えた。
「おう。松内やないか!久しぶりやな。」
「それは陛下が本城に来ないからにありますれば。」
松内は呆れている。
「そなたは?」
風麗を見て問う。
「傭兵として雇われております。風麗です。」
「そなたが……話には聞いています。」
風麗に松内は納得したように答えた。
「某は本城の家老。松内幸壱之佐にあります。」
「どうも。」
会釈をする松内に風麗は会釈を返した。.
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