散華の麗人
山頂に着くと、まるで戦の本陣のような垂れ幕を四方に張り巡らせている場所があった。

3人は垂れ幕を掻き分け、中へ入る。

その中には大きな太鼓があり、2人の男がいた。

「雨は降らぬだろうか。」
「今は曇りじゃが、晴れると予報士が言っていた。大丈夫じゃろう。」
2人は空を見上げて話をしている。

「沢川、与吉郎。」

一正が呼ぶと、2人は振り返った。

「陛下!!これは、ご無礼致した。」
沢川と呼ばれた者が跪く。
「お迎えに上がらず、申し訳ござらぬ。」
与吉郎も跪いた。

「ええよ。そんな。」
沢川と与吉郎に一正は笑う。
「与吉郎。」
「は。」
松内が厳しい口調で呼ぶと与吉郎が畏まる。
「買い占めの件はどうなった?」
「ことは順調に進み、地主等への取り引きも完了しております。」
「そうか。いいか?手間取ることがあれば、代わりにやる者はおる。」
気難しい表情で与吉郎を見て、冷たく言った。
「一刻も早く、一正殿に尽くせ。」
「松内!」
一正は松内を軽く睨んだ。
「仕事を与えられないことに対する苛立ちか?少し冷静になれ。あんたにはあんたの役割がある。」
「……御意。」
松内は頭を下げた。
「……無礼致した。」
「いえ。実直な意見、かたじけない。」
与吉郎も深々と素直に頭を下げた。
「これにて、御免。」
そう言って、与吉郎は去った。.
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