散華の麗人
当時は彼の父によく諫められたものだった。
『沢川。あんた、子供の声が聞こえんか?』
『聞こえます。』
沢川は淡々と答えた。
『だったら……』
『陣へ侵入してきた子供が居たが、ただの子供だと思い、気に留めなかった。しかし、子供は奇術を使い、多くの兵士が亡くなった……あの時の惨劇をお忘れですか?』
『忘れるわけないやろ。あの時のことも、わしを守って死んだ兵士も!!』
『ならば、情けは無用。あの時の繰り返しにならぬよう。』
怒鳴る一正を意に介さずに沢川は言った。
『分かっとる。やからと言って、関係ない者まで殺すんか?』
『殲滅せよとの命ですので。』
そして、溜め息を吐く。
「本当に、随分と諌められたものや。まぁ。今となってはその役は息子が果たしてくれているようだがな!」
昔を思い出して一正は思う。
「父の遺言でありますから。」
一正を沢川は真っ直ぐ見た。
「“例え何があろうと、決して陛下を裏切るな。必ず、正しい道を歩ませよ”」
遺言を言う沢川の姿がその父親の面影と重なる。
「某は父の言葉と陛下を守るのみにありますれば。」
「あんたはほんまに……父親似や。」
一正はそれを見て、懐かしく思って笑う。
そして、肩を竦めた。
「……にしても、わしを叱る奴が多すぎやしないか?ジジィや風麗とか。」
「突如、祭りをし始めるようなどうしようもない子供には見張りが必要です。」
「ぐ……」
冷静に言う風麗に一正は言い返したかったが、的を得ているだけに何も言い返せない。
沢川も松内も頷いている。
「ま。ええわ。」
一正はそう言いながら、太鼓の方へ向かう。
『沢川。あんた、子供の声が聞こえんか?』
『聞こえます。』
沢川は淡々と答えた。
『だったら……』
『陣へ侵入してきた子供が居たが、ただの子供だと思い、気に留めなかった。しかし、子供は奇術を使い、多くの兵士が亡くなった……あの時の惨劇をお忘れですか?』
『忘れるわけないやろ。あの時のことも、わしを守って死んだ兵士も!!』
『ならば、情けは無用。あの時の繰り返しにならぬよう。』
怒鳴る一正を意に介さずに沢川は言った。
『分かっとる。やからと言って、関係ない者まで殺すんか?』
『殲滅せよとの命ですので。』
そして、溜め息を吐く。
「本当に、随分と諌められたものや。まぁ。今となってはその役は息子が果たしてくれているようだがな!」
昔を思い出して一正は思う。
「父の遺言でありますから。」
一正を沢川は真っ直ぐ見た。
「“例え何があろうと、決して陛下を裏切るな。必ず、正しい道を歩ませよ”」
遺言を言う沢川の姿がその父親の面影と重なる。
「某は父の言葉と陛下を守るのみにありますれば。」
「あんたはほんまに……父親似や。」
一正はそれを見て、懐かしく思って笑う。
そして、肩を竦めた。
「……にしても、わしを叱る奴が多すぎやしないか?ジジィや風麗とか。」
「突如、祭りをし始めるようなどうしようもない子供には見張りが必要です。」
「ぐ……」
冷静に言う風麗に一正は言い返したかったが、的を得ているだけに何も言い返せない。
沢川も松内も頷いている。
「ま。ええわ。」
一正はそう言いながら、太鼓の方へ向かう。