散華の麗人
部屋の中には、眼鏡をかけた男がいた。
「お邪魔しております。国王陛下。」
男はニッコリと笑いながら言う。
(胡散臭い奴。)
風麗は男を見て思った。
「おう!リアンやないか!!久しぶりやな。元気しとったか?」
「はい。陛下も元気そうで何よりです。」
「せやな!」
一正が笑うとリアンがニッコリ笑う。

リアン。
名前だけは聞いたことがある。
清零国の軍師で策略家。
細川国の隣に位置する清零国は彼による策略で勢力を伸ばしている。
富国強兵を目指し、国王は絶対崇拝だ。
民より国王が絶対という考えの連中ばかりだ。
国境の警備は厳しく、許可なく国外には出れない。

(この人の笑った顔は好きにはなれないな。この表情は本心ではない気がする。)
素性は知れない上に、胡散臭いことこの上ない。
風麗はリアンにあからさまに嫌悪感を持った。
「そんでもって、何か用かいな?」
「同盟の件です。」
「?」
リアンに一正は首を傾げた。
「!」
一正は思い出したように手を打った。
「あ?あぁ!」
「陛下……」
その返事にリアンは不安げな表情をした。
(陛下、今の完全に忘れてたな。)
風麗は早くも先が思いやられる思いだった。
「今回の成田国への戦に貴方の国が勝つには上尾国との同盟。そして、我が国との同盟が必要です。って、ご自身がおっしゃっていたでしょう。」
「悪い悪い。」
一正が笑う。
< 6 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop