散華の麗人
陸羽は自室で茶を飲みながら、不機嫌そうにした。
「下らぬ。」
吐き捨てるように言う。
「陛下にも何か考えがあると思いますよ。」
「わかっておる。でなければ、半殺しよ。」
どこからか来る狐子の声にそう答えると陸羽は茶を飲み干した。
「……それで、ぬしは何故、姿を現さぬ?」
「必要ですか?」
「いや。風麗とは違うなと思っただけよ。」
陸羽はさして気にかけないように外を見た。
「ぬしは祭りには行かぬのか?」
「いえ……」
少し戸惑ったようなその口調は“本当は行きたい”と言っているようだ。
「狐は貴方の元から離れぬようにと主から言われていますから。」
「なれば、行くのだな。」
陸羽はゆっくりと立ち上がった。
「え?」
「いや。なに、ほんの興味よ。」
そう答えると、狐子は背後に姿を現した。
「せいぜい、ぬしは儂についておれ。」
「はい。」
狐子は平静なフリをしているが、嬉しそうなのが陸羽にはわかった。
(所詮は子供よの。)
陸羽はそう思いながら、狐子と共に城を出た。
< 60 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop