散華の麗人
これ以上は辻丸の目の前に居たくない様子だ。
「じゃあ、行こうか。」
「待て。」
一正が苦笑すると辻丸が呼び止める。
「リアン。答えろ。何故、成田を……おれの家族を奪った。この戦いの発端はお前の策略だろう?」
「さぁね。」
リアンは素っ気ない返答をした。
「この戦いは僕が居ようと居まいと起こっていた。そして、清零国であろうと細川国であろうと成田を手

に入れていた。」
「だが……」
「そのような質問をするということは、僕に恨まれている心当たりでも?」
食い下がる辻丸にリアンは嗤う。
「幼い時はよく一緒にいたものだ。それが何故、このようなことを」
「そのような情がこの世界で通用しないと解らない貴方ではない。」
「だが、おれは……お前が何か企んでいるように見える。」
辻丸は真っ直ぐに見た。
「野望や目論見、自分の利益など、誰もが抱くことでしょう。寧ろ、それがないというのがおかしい。」
リアンはちら、と時雨を見る。
(そう。貴方のような真っ直ぐな人間はこの世界では生きていけない。)
そう評した。
「しかし、このまま食い下がられては埓が空きませんね。」
“仕方がない”というように肩を竦める。
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