散華の麗人
見透かしているような笑みに雅之は嫌悪感を露わにする。
「この国はふたつにわかれている。その行く末にわるいくにがあるのなら、わたしは裁く。」
「善悪など、下らぬ勘定だ。」
「ふふふっ」
雅之に少女は言う。
「あの方がのぞんだ国いがい、ほろんでしまえばいいの。」
無邪気な笑みを浮かべて言った。
「俺が行く先の未来。それはあの男が紡ぐ国だ。それ以外、切り捨てる。」
「あのひと……たいようは、やがてかげに食らわれるわ。」
淡々と少女は言う。
「あなたが成り代わるでしょう。だけど、かげはかげ。たいようにはなれないわ。」
「それでも、俺が目指す道は変わらぬ。」
「大事な人をなくすとしても?」
その言葉に雅之の瞳は揺らぐ。
(遥葵。)
陸羽派に属している恋人を想う。
「そうだ。」
揺らぎを切り捨ててそう言い切った。
「貴様が何者かは知らない。だが、その狭い価値観で俺を測れると思うな。」
そう言い放って去った。
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