散華の麗人

人間

清零国王は外へ出て身支度を手短に終えていた。
馬を出すと、向こうから何者かが来る。
「これは、清零国王。」
その者は馬から降りて会釈をした。
外見は少年のように幼いが、物言いや振る舞いに幼さはない。
金髪にひと房だけ黒髪が混ざっている。
そして、黒髪の先に緋い髪留めがついている。
「気安く話しかけるでないわ。」
清零国王は嘲笑混じりに言うと去っていく。
それに対する男の反応はない。
無感動な視線を清零国王から城の方へ移す。
「変わらぬな。」
そう呟いて城へ入った。
清零国王の前でも変えないように、城を見ても何も表情を変えなかった。
瞳の奥は酷く冥い。
冷たささえ感じないような虚空を思わせるその目は幼い風貌に似つかわしくなく、彼を見て幼さを感じない所以を知らされる。
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