散華の麗人
一正は真剣な顔つきになる。
「これより、成田城を八倉家へ引き渡す。」
そう言って、説明を加える。
「八倉家の居城は今や研究施設となっておる。城としての能力を果たしてない。ならば、いっそのこと施設は施設、居城は居城として存在したがえぇ。」
辻丸達にも説明した話をする。
「それに伴い、辻丸を家臣として八倉家へ引き渡す。」
「ほう。」
そう返事を返し、景之は無感動な視線を辻丸へ向ける。
吟味するような印象を受けるものの、不気味なくらいに表情を感じない雰囲気に辻丸はあからさまに嫌悪する。
「お前のような者に仕えるなど、不本意極まりないが。皆が笑って暮らせる国があるのなら従う。それだけだ。」
「子供など、野で駆け回っていれば良い。」
「このおれを馬鹿にしているのか!」
「その態度の何処が大人に見える。立場を弁えろ。」
噛み付くように怒鳴る辻丸に対し、景之の表情が変わることはない。
< 617 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop