散華の麗人
景之は問う。
「成田城を居城とするにあたって、其処に元より滞在している家臣についてはどの様にするつもりだ。」
「それも、八倉家へ引き渡す。」
「万が一、楯突いたなら処分しても構わないな?」
一正が答えると、景之が冷酷に言う。
「ならぬ!おれの家族に手を出すな!!!」
辻丸は景之に掴みかかると激昂した。
「人間風情が。」
そう言うと景之は辻丸を突き飛ばす。
「家族、か。随分と手駒に情をかけているものだ。……敗戦国の分際で、意見を受け入れられると思うな。」
「な……っ!!」
「楯突かなければ良い。簡単なことだ。」
「景之。」
辻丸に言い放つ景之を一正が諌める。
「細川。貴様を国王だと認めたことはない。故に命ずる権利は貴様にはない。」
景之は冷淡に言う。
「今も昔も、貴様が殺した男に俺は仕えている。」
その視線は一正を捉えていながら、認識していない。
「そうであれ、この国の王はわしや。従ってもらう。」
「ふん。隙あらば、殺してやろう。」
「覚悟しておく。」
一正と景之の視線がぶつかり合い、空気が張り詰めた。
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