散華の麗人
少しの間が空く。
「正室も側室も半分は政略結婚のような形だった。八倉家存続の為、研究所の為、そうせざるを得ない。」
世間でも知られる話を時雨はする。
「その中で愛した遊女。今も愛しているからこそ、憎悪も大きい。そして、その憎悪を子には向けたくなかった。あくまでも憶測ですが。……だからこそ、無関心で道具だと思うことを選んだ。」
時雨は一正を見る。
「お師匠は一度だけ、私に当主殿の話をしてくれました。」
「畝が?」
一正は驚く。
「はい。」
そう返事をして、過去を思い出す。
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