散華の麗人
時雨は一正を見る。
「お互い、愛している。親子として、愛おしいと思っているのです。」
「だったら何で……」
そう呟いて、言葉を続けようと口を開いた。
「憎まなければならない。景之は愛していた女が自分を裏切ったという現実を受け入れる為に、畝は親からの愛を否定する為に。」
「どちらも自己防衛の手段なら、どちらかが傷つく覚悟が無い限りは解り合えないのでしょうね。」
一正の見解に茶々が言う。
「あのひねくれ者の師匠がああ言うくらいですよ。陛下。」
時雨は真意までは言わずにそう言って立ち上がる。
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