散華の麗人
茶々に渋面で時雨は答えた。
「私は今まで陛下と会話こそ交わせども、報告のみだった。命じられることは殆ど無い。」
「だから、今回の件は大きなものだと。」
「あぁ。」
茶々に返答した後の表情は心なしか柔らかかった。
「分城に配属されると決まった訳ではないが……もしそうなったとしたら、陛下に一歩近づける。」
憧れるような眼差しで言った。
「照れるというよりも、嬉しいのだ。皆まで言わせるな。」
眉を寄せるものの、喜びが伝わった。
「人嫌いが他人に認めて欲しいなど、笑い話とでも思うだろう。」
そんな皮肉を言う。
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