散華の麗人
一正は風麗を見る。
「…………例え、捨て駒扱いをされたとしても、兵士達には“人間”として迎えてくれる家族がいます。この国が……兵が帰る場所が有る限り、彼等は救われるのです。」
「そうか。」
一正はそう言うと、背を向けた。
「リアン。」
「はい。」
リアンは僅かに居住まいを正した。
今度は同盟国の軍師としての態度だということだろう。
「あんたのとこの軍を成田へ向かわせろ。」
「わかりました。」
一正の下知にリアンが従う。
「風麗。あんたは来なくてもいい。」
そう言うと、一正は早足で去った。

「陛下?」
風麗は驚いた表情で戸惑った。
リアンはため息を吐いた。
「あの方も随分、甘い……戦がお嫌いだ。」
(天下人になろう者のくせに)
「私も嫌いです。」
風麗ははっきりと言った。
「ククッ……」
その言葉にリアンは嗤う。
「戦の末に、自分が望む未来があるとしても……ですか?」
(そのような考えは、いつか身を滅ぼす。)
そう言うと、リアンは去った。

月夜もそれに着いて行く。

風麗は踵を返して反対側へ歩いた。.
< 66 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop