散華の麗人
「あの傭兵にも、周囲の者にも、次期国王だと認識されていたようだな。」
「事実、へなちょこ本人でも“国王の後継が居るなら早く離任したい”と言ってましたし。」
「もっとも、奏国は認めてくれへんかったようだがな。」
「不可思議な話です。」
風麗は溜め息混じりに言った。
「側近は利輔といったな。奏国王と同じ、9つだったとか。」
「よく城を抜け出す不思議なお人ですよ。」
「何や、難有りか。」
「へなちょこほどではありませんが。」
一正に答える風麗の表情は懐かしそうだ。
(大事な人というのは、奏国王ではなく、側近の話か。)

『昔、幼い頃に……よく一緒に話していました。その人は、身元は明かさずに朗らかに笑っていた。でも、ある日、解ったのです。その人は国王の後継だと。』

(後継と言っていたのはそういうわけか。)
雅之は納得した。
< 682 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop