散華の麗人
雅之は他人事のように報告した。
「八倉家次期当主は国が滅ぶ前に、側近が自害を望んだ故に任を外されている。最期は知らぬ。」
「そうなんか。何とも、無念やな。」
一正は死者を悼む表情をした。
「だが、その2点の矛盾は妙な話や。」
「そうだな。」
雅之は矛盾点に唸る。
「例えば、次期当主の離任後に何らかの理由で別の者が護衛にあたり、最期を看取ったのならば多少は納得がいくな。」
雅之は渋面で言った。
「私以外に“麗人”と言われる人物は知る中では3人だ。」
風麗は言う。
「1人は母。……奏国の戦の時には亡くなっている。」
そう言うと目を伏せた。
「もう1人は八倉家に居ると聞いている。しかし、真相は定かではない。八倉家の者か、実験台か、はたまたガセネタかも不明だ。」
「俺も見たことはない。」
雅之は頷く。
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