散華の麗人
そして、部屋から人が出ていき、敦賀と時雨が残った。
『何故助けた?』
その問いを一瞥して、時雨が刀を突きつけた。
『貴様、前の戦で右腕を負傷しているのを隠しているな?何故、報告しない。私の実力が信用ないのか。』
『そうではない。ただ……』
『ただ?』
『取るに足りないと思っただけだ。』
『それを判断するのは私だ。』
その答えを軽蔑する目で時雨は敦賀を見た。
『その怪我にもう少し早く気付けば、私が裏門を警備していた。』
『気遣わせたくはなかった。』
『下らぬことだ。』
時雨は刀を収めて、踵を返す。
『平懐者に余計な気を遣うな。』
そう言って去った。
< 689 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop