散華の麗人

そして、目を細める。
「ぬしは……あやつが好きか？」
「へ!?」
狐子は間抜けな声を出した。
「１人の人間としてだ。」
「あぁ……はい。もちろん。」
「そうか。」
陸羽は狐子の返答に安堵した。
「……儂はもう先は長くない。」
「そんな気弱なことを」
「いや。そうではない。ただ……老衰とは、誰もが抗えぬ自然の摂理よの。」
狐子に陸羽は足をさすりながら言った。
「だから、若し……儂がおらぬ世で、あやつが四面楚歌になったなら、あのバカモノの味方になって欲しい。あやつが正しくある限りな。」
「はい。」
優しく、一正を案ずるように言う陸羽に狐子は頷いた。
それを見て満足そうに陸羽も頷く。
「しかし、急にそのようなことを言って……どうかなされましたか？」
「……フーム。」
陸羽は一息吐いた。
「何故だかな。」
そう言うと、狐子を真っ直ぐ見た。
「ただ、ぬしを信ずることにした。それは確か。呉々も裏切ってくれるな。」
「はい。」
狐子は陸羽を真っ直ぐ見据えて跪いた。